厨房思案 第107話 「新時代の家訓」

新型コロナウイルスという厄介なものがこれ程の騒ぎになるとは思いもよらなかった。
世の中が一変してしまったのだから、もうこれから先は予想もつかないだろう。 まあしかし、考えて見れば世の中というものは、以前から先の読めないもの。今から気を揉んでも始まらない。

いや、それよりも昔本店をオープンした頃は大変だった。 毎日が苦しかったな。生きた心地がしなかった。 経営に行き詰まり、もうこれ以上先にすすめない、だからこれでもう堪忍してくれなどと願ったものだ。

我が家には昔から家訓らしきものがあり、これは目に見えるわけでも無く、あるような無いような自分自身に勝手に思い込むような家訓である。 だが実際は祖父も父もそうだったかも知らん。苦労の耐えない人生に見えた。
ただこれは困る。できれば苦労したくない。楽に生きて、のほほんとした人生だったらいいといつも願っている。

こうして、ウイルス大流行の時代にかつての自分自身の苦労を重ねると、自分は少しは強くなったかも知らん。 ものの本に、人は病気で死なない、寿命で逝く とあるが本当だろうか。
ならばこの新時代の家訓にしようかな。


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2020年 7月 本店にて