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厨房思案 第二十三話


「THAT'S WHERE I AM」(−True story about 「くにもと」−)

途方に暮れていた訳でもないが、とにかく探さなくちゃいけないという何か後ろから誰かに押されたように あてもなく店舗を探していたので、貸看板が出ていようがいまいが、自分の感を信じて動いていた矢先に とうとう見つけ出したのが今の本店の場所であった。

もちろんいきなり人様の家に行き「貸してくれ」などとは言えない。
とうとう見つけたその家の情報収集から初めて、一体どなたが持ち主かを最後の最後になって 近所の八百屋のご主人から聞いたのである。 大家さんの親戚の方が借りていらして、 そこは金アミの会社をおやりになっていて、実はもうすぐ引越しをする予定、ということも聞き出した。

引越し?
今何と言いました?『引越し』?ですか?
僕はなんて運がいい奴なんだ!

早速キチンとした服を着て、髪をとかし、名刺を持ってたずねて行ったのである。
しかし、そうは云ってもドキドキする。
電話で”おたずねしたい”と直接頼んでみたものの、おそるおそる、
「あのう、貸して頂けませんか?」とやったものだから「ハァー?!」は当たり前なのである。

事情を説明し、何とか大家さんに取り次いで頂けないでしょうかと食い下がり、2回、3回とやり取りが続き、 先方様も、こんな家でよければどうぞ、とついには貸してくれたのである。
何をどう思って自分がこの家をどうしても借りたいのか、今以て分からない。
重ねて云うが、とにかくひでぇもんだった……!(大家さん、本当にすみません)

最初に見つけた物件のほうが25坪もあり、2階の窓から桜の木々を臨み、いい雰囲気の場所だったのに、その物件を査定中にもかかわらず断ってしまった。
『どうしてもこのボロ家を借りたい!!』
昔の言葉に、アバタもえくぼを思い出したが、惚れたものの弱みでこれはもうどうしようもない。誰が何と云おうと僕はここでやる、と決めてしまったのである。

そんなこんなでついに借りてはみたものの、なにせ古い建物。
大工さんになんとかしてほしいと頼んでみたが、ずいぶんと嫌な顔をされ、その上予算が厳しいときているから、開店日のその日まで僕も手伝いに朝から明け方までコキ使われ、やっとの思いで完成した日には、大工の頭と手に手を取って、店の玄関前でおいおいと男泣きに泣いてしまったのはついこの間のような気がする。
近代的な設備を施した建物には程遠いが、当初のボロ家が見違えるようになったのにはびっくりしたし、うれしかった。 自分が選んだこの家で、思う存分自分の思った通りにいい仕事をしようと自分自身にいい聞かせて、ついに、「焼肉くにもと 本店」は完成をみたのである。

僕のいる場所、「そこが僕のいる場所」を見つけたのは今でも不思議だがめぐり合わせの妙と思っている。 しかしながら、雨が漏れは修理をし、トイレが詰まれば排水工事をしと、年中どこかを修理している有様だが、金のかかる女に惚れたと思ってそのくらいは大目にみようかぐらいの気になっている。

縁というものは人と人だけではなく、人と家、人と場所にもあるんですねぇ。

「THAT'S WHERE I AM」完
於、本店厨房
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