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厨房思案 第十四話


「Nothing but the 牛肉」

先日、当店と契約している淡路島の牧場主から東京に行くと電話があり、
飛行機の便名と到着時刻を聞いて、うーん、弱った。

滞在時間が短い!
徳島発9:30AM、羽田着10:30AM、帰りが羽田発16:45PM。
東京到着後、途中寄る所があって、それから一緒にお食事でもしながらお話でも、
という段取りで、日帰りなのである。

牧場主は奥様と、忙しい時間を工面して僕に会いに時折このように過密スケジュールの中を来てくださるのであります。

牧場主の彼とは、単なる商売上のパートナーから始まり、
段々と少しづつ近寄りあい、また理解し合ながら今年に至って、
9年の歳月を経て、ようやく彼も僕も厚い信頼と友情を絆に、今では男同士の付き合いで、
家内と奥様と家族ぐるみのお付き合いをしているわけである。
そんな中でわざわざ東京においでになるわけであるからして、
僕もできるだけのことはして差し上げようと、束の間の「東京」をご案内したことがある。
前回は日本橋、浅草、芝増上寺、東京タワーなどど、過密スケジュールでまわったのである。

しかし、今回はもっと短い。 さて、当日は日曜日。ウチの店は定休日。

オーナー夫妻、僕と家内、車を走らせて残り3時間。うーん……、
「銀座へ行きましょう!」と思わずひらめいた案を口にしてしまった。
しかし、まてよ……、と内心困ってしまったのである。

銀座。
僕は銀座へはよく行くが、メシは食ったことないのですよ、銀座では。
(ひいきにしている店は山ほどあるのに……)
しかし!そんなこと云ってるヒマはないのである。

兎に角、銀座に着いて奥様の為にヴィトンへ行き、
ご主人の好きな日本酒を松屋の地下で買い求め、
さて昼時も相当過ぎて、その困ったメシをどうするか?

ウロウロする訳にはいきません。
とりあえず入りました。天ぷら。目の前にあったのである。
四人で入ると相当混んでおり、まぁなんとか座って定食のセットを注文して、
足りないと困るのでお刺身も追加した。

これが良くなかった。
鮮度というよりも、天ぷら屋さんのお刺身はやはり注文するべきではなかったなと、後で反省したのである。
(お刺身に)手をおつけにならない。
オーナーご夫妻、淡路島生粋なのであります。
クロダイ、舌ビラメ、海老、タコ、ないものはない位魚の宝庫なのです、淡路島は。
コリコリのシャキシャキのグレーテストな本場の国からおいでの人達に、
僕は、”何を考えているのかね?君は!”などと、自分を責めたのである。
弁解するわけではないが、このところ残業続きで、昨夜は仕込みでほとんど眠らず。

しかしながら、オーナー夫妻はざっくばらんに、ニコニコしながら
「銀座のヒラメもええもんやないですか」と云ってきれいに全部召し上がっていただいたのである。

食後、僕とオーナー、奥様と家内四人で銀ブラを楽しみ、三越の脇で写真を撮り、
松阪屋の前でしばし束の間の東京を眺めていた。
その時、オーナーは僕にコッソリと耳打ちしたのです。
「くにもとはん、こんなようけ気ぃ使わんでも、くにもとはんのお店でゆっくりと肉でも食べましょ、次回は。」

羽田でオーナー夫妻を見送った後の車中、
お土産に頂いた淡路産の「のり」。これ、どうしても食べたい、今すぐ!
我慢できずに包みを破って食べたら「本物」の味が頭をガツーンと殴ったのですよ。
”のり一筋”の本物の味がね。

「いけねぇ、やっぱりオーナーの云う通り、ウチの二階でやればよかったな」。
彼等の為に店を開け、炭をおこし、肉を切り、
まず手始めにウデの刺身に、いちぼのタタキ酢醤油ときて、
とも三角の脂の乗ったやつは塩にして、
淡路の特選わかめを程よくもどし細かく切って、らんいちロースの柔らかい所を薄切りにして、
特製のタレでもみ合わせてユッケにする。
メインは松阪のヒレを塩、淡路のヒレをタレにして両方の食べ比べも悪くねぇ。
締めくくりに、6時間煮込んでおいたトロトロにしたネックをクッパに入れて、
別腹の冷麺でお開き。

「オマエはなぜこういう接待をしなかった!?」
と自分を責めたのである。
そのお土産にいただいた「のり」を何枚も何枚も口にいれて……。

がしかし、
この一件で僕はひとつ確信が持てたのですよ。
あの「のり」を食べてね。

それは、僕が牛肉一筋であるということ。
海老もカニもヒラメもマグロもどこぞの誰かさんにお任せして、後にも先にも僕は牛肉しかやらないと。
於、羽田空港パーキング。(自分の車がみつからない!)

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