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「宙ぶらりんもまたよし」
電気掃除機をかけるのが大変好きで、暇を見つけては部屋のスミからスミまでホコリやゴミなどを吸い取る。
掃除機の口が自由自在にゴミをきれいに吸い取り、すっかり見違えた部屋や廊下などを見るととても気持ちがいい。
こういう結果のハッキリした行為が意外に自分の気を晴らしてくれる。
そもそも世の中というものは、このようにいつもハッキリとクリアーにしてくれる訳ではない。
トラブルが起きたり問題が発生したり、あるいは一行に進まない事柄があったりと、常に何かそういうものに囲まれていて、
宙ぶらりんの状態などが必ずどこかに、誰でもあるものだ。
若い頃などは、この宙ぶらりんのハッキリしない、さらには一行に進まない自分のまわりにウンザリし、
あるいは自分自身に悩まされていたものだ。
ココカラココマデと線を引いて、
「さぁ、終わった、メシだメシだ。」なんてことにはならない事が多かったように思う。
結果の見えない、訳のわからないことを、ただ淡々とコツコツやるのは相当にしんどいが、
ある程度の成果を自分で見いだし、
「おぉ、良くやったな。」とか「なかなか上出来だ。」などと、その都度自分に対して少し褒めてやり、
そのなんてことない小さな目標のようなものを少しづつこしらえて、
それを飛べるくらいの高さのハードルにして、ヨイショットォーというように飛んできたこともある。
あるいは、全然結果などお構いなしに、とにかくやらなくちゃならんのだという時は、
誰が何と云おうと、寝食も忘れて仕事仕事の人生も歩いたが、それはそれでそのプロセスが好きだったし、
結果なんぞどうせ後から成るよう成ると思っていた。
しかし、いつもこの宙ぶらりんの、そして、曇ったままのハッキリしないこの世の中は、
相変わらず存在していて、
もう今では慣れっこになったし、むしろ快感にとまではいかないが、嫌ではなくなった。
だがそうは云っても、相当にこの宙ぶらりんがたまってくると、
僕はこの電気掃除機を引っ張り出して、
片っ端から部屋を掃除して少しでも気を晴らすのである。
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