仕事柄のんびりごはんを食べると言うのは、せいぜい定休日のお昼くらいで、普段は大抵サンドイッチかおにぎりを仕事の合間に食べる。
こういうのがしばらく続くと我慢も限界にきて、なんか旨いものを喰いたくなる。
じゃあ今度の定休日に行こうと思うが、当日になると用事が出来てまたサンドイッチになる。
いや、本気になればクルマでシャーッと行ってムシャムシャ食べてしまうこともできるがね。
だけど、そういうの美味くないんだ。
まあ、この気持ちがね、旨いもの喰いたいという欲があるのはまだいい。
僕の母はもう九〇歳に手が届くが、なんとか元気です
。食欲は衰えたけど、まあ自分のことは自分でできる。立派な人です。
ただ、食欲を懐かしむ。今はもう食べたいものが思い浮かばないそうだ。
食べることを思い、想像したら唾きが口に溢れると言うのはもうこの年にはないんだろうか。
戦中、戦後口に入るものならなんでも食べる、という過酷な時代を生きてきたのに。
この間自宅で家族が集まり、食事した。
母の作った野菜がやたら入ったおつゆ。
昔は結構食べたんだけど、今はあまり美味しくない。
家族が頭を寄せ合い、気の利いた話も無く、黙々と食べた。
母をみれば、食べてる。
おもむろに箸を伸ばし、食べている。
お腹がいっぱいになって、みんなでテレビを見る。
お母ちゃん食べてたなあと思う。まだ食欲あってよかったな。
誰かがテレビの一コマで大笑いして、なんだかわからないけど、つられて笑って
幸せな気分になった。
自宅にて