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厨房思案 第四十三話 |
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「まかないごはんは創造して」
「くにもと」では当番制でまかないごはんを造る。
以前は僕が全部造っていたが、それも若いスタッフにはありがたいだろうけど、いい加減に勉強をしないから当番制にして造ってもらっている。
仕事が終って造るから大変なのであるが、ちゃんと造れ、とクギを刺しておく。
造ると云ったってせいせい4人〜5人前位だから大したことはないけれど、サラダ、メインのおかず、スープは最低造らせる。
ここの所上手になっておいしいと思うが、時折、まずい。
「しょっぱいよ、コレ」とずけずけ文句を云う、僕は。
おいしね、ありがとう、は云わない。
疲れているのにまかないを造ってくれてありがとうと思うが、それで済ませたら彼等の為にならない。
焼肉のメニューに何の関係もないことだからとは思わせない。
関係は大ありなのだ。
”まかないごはん”は創造の源であり、定番メニューにだってなれるものもある。
「世の中にまかないごはんから生まれた定番メニューがどれ程あるか、君達は知っているのか。」と云う。
まかないご飯はないがしろにしてはいけないと思う。だから文句を云う。
まかないが上手になると、手や体が、その味付けや料理の構成、段取り、果ては片付けまでがスマートに手際良く覚えてくれる。
パッとできるようになる。おいしい。 ここまでできれば文句ない。
鍋をいくつも引っ張り出して、あちこち散らかして、沢山こぼして、”ハイ、できた”ではダメなのである。
片づけながら、忙しい合間に段取りをつけておいて、ヒマを見てサッと造り、
”ハイ、どうぞ”とやったらもう鍋も洗い物もなく、きれいに片してあって、後は食べるだけです、というのが望ましい。
これは昔、学生時代のアルバイトで働いた居酒屋の大将さんに教わった。
どんどん造れとおっしゃる。
造りながらヘタなりに考える。
「火が強すぎる」、「塩が足りない」、「片づけが遅い」、「何故味見をしない」
そうやって、少しづつヘマをくり返してゆき、段々と覚えて大体1週間のまかないメニューがパッと悩まずに浮かぶ。
これは実に勉強になって、
その内、クチウルサイ大将さんが僕のまかないごはんを食べて、ニコッと笑った時は
うれしくれ、うれしくて、今でも忘れない。
だから、ウチの若い人達にも同じようにして”まかないごはん”、造ってもらう訳です。
まかないごはんを造るということは、創造力を養う訓練なのです。
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